
イベントに参加したぞ!
こんにちは、おさるです!
第一学習社編集部国語課の古文担当で、教科書や国語便覧の編集にいそしんでます。
先日、こんなイベントに参加したぞ!
■FGO関連本でのビブリオバトル
日時:2026年2月15日(日)
※以下のリンクからアーカイブ視聴できます
(公開は2026年3月末まで)
「FGO関連本でビブリオバトルとは…?」となったあなた!
……同感です
お声がけいただいたときは、自分もびっくりしました。ですが、読書とサブカルチャーへの熱量あふれる、めちゃくちゃ楽しいイベントだったんです!
今回はそのレポート記事となります。では、どうぞ!
そもそもどんなイベント?
まず、ビブリオバトルとは、参加者が5分間でオススメ本の魅力を紹介し合う「知的書評合戦」です。最終的には投票によって、「最も読みたくなった本」――チャンプ本を選ぶというルールとなっています。
今回は「FGOに関連する本」というテーマが設けられていました。
では、FGOとは?
ほんっとうに端的に言うと、スマホゲームです。
史実や伝説上の偉人たちがキャラクターとなって活躍するのが魅力のひとつ。
元となった人物の伝記や物語を読むことでより楽しめるので、読書との相性が抜群なんです。
国語便覧座談会の記事でも、便覧を片手に楽しむFGOの話題を取り上げたことがありました。
実は、今回のイベントへのお誘いも、この記事がきっかけとのこと。
おさるは、曲がりなりにもFGOをサービス開始当時から10年近くやっている身。
せっかくのイベントごとだし、楽しそうと立候補してみました。

……負けられない戦いってあるよね。
迎えたイベント当日
背水の陣で迎えたイベント当日。
座談会メンバーの力も借りつつ、細工は流々です。
ちなみに、バトラー参加者は自分をふくめて4名。
図書館司書で型月作品にも詳しいアミノさん。
FGO関連本の選書リストを作成したこともある草思社営業部さん。
図書館や本が好きな、ああだこうださん。
司会進行は、イベント主催者の格闘系司書さんが行ってくださいます。
まずは事前のZoom接続テストですが、ここから勝負を仕掛けていきます。

「そう来ましたか」と笑うのは、格闘系司書さん。
ちなみに”格闘系”というお名前とは裏腹に、優しいお声をされていました。
目論見どおり、ほかの参加者の方々を圧倒することに成功。
家族に奇異の目で見られながら、ハサミちょきちょき、テープぺたぺたした甲斐があったというものです。
(あまりのアナログなパワープレイに、言葉を失っていた可能性もあります)
続いては自己紹介の時間。
ここは千載一遇のチャンスです。
最近改訂を加えた便覧を紹介せねば……と焦ったのがよくなかった。

無事(?)自己紹介も終えて、発表順の決定です。
抽選で自分は首尾よく4番目を確保します。
なお、今回は第一学習社が無料公開している「発表順決定ツール」を使用いただきました。なお、一言断ると不正はないです。自分も存在を忘れてました。
いざ、ビブリオバトルの時間!
ほかの方の発表を見た個人的な感想もふまえて、振り返ります!
アミノさん
冲方丁『麒麟児』(KADOKAWA、2018年)
勝海舟を取り上げた小説。
坂本龍馬の師として有名ですね。FGOではNPCとして登場していました。
冲方丁さんといえばSFだけでなく、「天地明察」や「はなとゆめ」などの時代小説でも有名な方。自分も好きな作家のひとりです。「麒麟児」は未読でしたが、共感できる選書に個人的に始まる前からワクワクしていました。
アミノさんの推しポイントのひとつだった、勝海舟と西郷隆盛との交渉場面。
勝海舟は、いわば手ぶら―降伏条件に対するよい回答を持たない―の状態で交渉に挑むことを余儀なくされるらしい。
――え、勝海舟はどうやって乗り切ったの!?
「無血開城」という結果を知っているからこそ、気になるぅ。
アミノさんの落ち着いて理路整然としたプレゼンもあいまって、ついつい読みたくなります。勝海舟がFGOにプレイアブルキャラクターとして実装されることを、自分も心待ちにしています。
交渉術の逸話からキャスター?幕府に仕えてからの業績に霞むのですが、剣も達者。直心影流剣術の免許皆伝保持者であるので、セイバー?いやいや、龍馬がライダーだからキャスターが美味しいでしょうか。悩みますね。
ああだこうださん
水谷彰良『サリエーリ 生涯と作品 モーツァルトに消された宮廷楽長(新版)』(復刊ドットコム、2019年)
イタリアの作曲家、アントニオ・サリエリに関する本。
サリエリはFGO初登場時、自分も記憶に残ったキャラクターです。
この本も、「FGOプレイヤーの投票で絶版だったものが復刊になった」と当時話題になった本だ、と書影を見てピンと来ました。
ただ、そのレベルのうっすらとした認識しかないところに、襲い来るかのような、ああだこうださんの熱量のこもった紹介!
モーツァルトを毒殺したという、サリエリに対する後年の誤解を紐解くプレゼンに歴史ミステリのような興味をそそられます。そして極めつけは、最後の一言……。
――復刊投票、わたしも投票しました!
あ、やっぱり。
ああだこうださんにとって、思い入れのある一冊だということがひしひしと伝わってきて、聴いているこっちがなぜかニッコリしてしまいました。
人の好きなものの話を聴くっていいですよね。
草思社営業部さん
芝崎みゆき『古代マヤ・アステカ不可思議大全』(草思社、2010年)
マヤ、アステカ文明などについて、絵やマンガをまじえて紹介した本。
FGOでは、ゆかりのあるキャラが登場したり、メインストーリーの舞台になったりもしていました。
始まってすぐに思ったのは、草思社さんの紹介がとにかくうまい!
さすが営業部の方だと思わせる板についた語り口で、ぐいぐい引き込まれるんです。
手書きのイラストは、筆者が現地調査を重ねた成果だという版元ならではのこぼれ話もあって、より興味をひかれました。草思社さんが古代メキシコ展に行ったときには、「展示のこれ、芝崎先生の話と同じだ!」となったとのこと。
――自分もそんな気持ちになってみたい!
ゲームをきっかけに読書へと広げてほしいという話題もあり、同じ出版社という立場から、「うんうん」と頷いてしまっていました。
おさる
さて、いよいよおさるの出番です。
あまりの緊張に口から心臓が飛び出そう……。
自分が選んだ紹介本は、こちら!
曲亭馬琴原作、浜たかや編著『南総里見八犬伝』(偕成社、2002年)
曲亭馬琴の古典小説を児童向けに読みやすく再構成した一冊です。
曲亭馬琴は推しのキャラクターのひとり。
推しのキャラクターの関連本で、真正面から挑むことにしました。
――『八犬伝』が好きだから、私はFGOを好きになったんじゃないか。
序盤には、このビブリオバトルを通じて語りたい問いを投げかけます。
このフックが視聴者の心に引っかかれば、御の字です。
――アトランティスですべてを犠牲にしてオデュッセウスを葬る決断を下したシャルロット・コルデー。涙が止まりませんでした……。
俗に言うオタク特有の早口の語りも交えてみます。
視聴者はフフッと笑ってくれているだろうか。
ダダ滑りおさるさんになってはいないだろうか。
反応の見えないオンライン特有の緊張感に汗が滲みます。
――あなたが、物語の構造に胸が躍るとき。
――あなたが、伏線に心が震えるとき。
――あなたが、誰かの選択に、涙をこぼすとき。
――『八犬伝』のことを思い出してみてください。
もっとも力をこめた一節は、ここでした。
画面越しに指さすような身振りを加えてインパクトを出します。
力技の顔出しは、実はこのための準備でした。
時間ぴったりでフィニッシュ。あとは結果を待つだけです。
結果発表&雑談タイム
さて、結果は……
チャンプ本に選ばれました!
正直、ほかのバトラーの方の本にすごく魅力を感じていたので、驚きでした。
アーカイブを見返すと、動揺でまったくリアクションができてなかったです。
結果を聞いて最初に思ったことはなんでしょう?
これで会社の人に顔向けができる!

……というのは八割くらい冗談です。
ただ、『南総里見八犬伝』のおもしろさを知ってもらえたこと。
それだけでなにものにも勝る喜びでした!
何より楽しかったのは結果発表後の雑談タイム。
それもそのはず、全員がFGO、そして本が大好きなメンバーなわけですから、盛り上がらないはずがありません。
図書館の特集棚の話に始まり、古代アステカに巨大ロボットがいたか、紹介本に関連するドラマ・映画・展示の話、ガチャでレアキャラを引くために実践している秘訣に至るまで……語るとキリがないほどです。
ビブリオバトルのキャッチコピーは「人を通して本を知る。本を通して人を知る」です。
まさにその言葉にふさわしく、本を通して交流が深まる楽しいイベントでした!
古典嫌いや古典不要論が話題になる昨今。
古典をもっと身近なものに感じてほしい、自分たちの周りに息づいているものだと知ってほしい。
そういう思いを発信できる場をいただけて、本当に感謝ばかりです。
主催者の格闘系司書様、参加者の皆様、視聴者の皆様、ありがとうございました!
こぼれ話
ビブリオバトルに初挑戦した感想としては、正直難しかったです。
とくに本の魅力だけでなく、FGOとの関連性を語って、なおかつ聞きやすく引き込む紹介を行うのは思ったよりも至難の業でした。
それでもなんとか形にできたのは、社内のコラムラボメンバーが選書やリハーサルを手伝ってくれたおかげでした。
ただ、当然発表時間5分という枠に収まらなかった話もあるわけで――。
そうした余談をつらつらと書き連ねて終わりにしたいと思います。
※以下、期間限定イベント「南溟弓張八犬伝」のネタバレ入ります!
曲亭馬琴が実装されたのは期間限定イベント「南溟弓張八犬伝」でした。
物語は「義」の犬士であるソウスケが、主人公たちのいるカルデアに現れるところからスタートします。
『八犬伝』の主人公格は「孝」の犬士である犬塚信乃(=シノ)なのに、なぜ「義」のソウスケがフューチャーされるんだ?
疑問符を浮かべた方も多いことでしょう。
ただ、これはクライマックスで明らかになります。
――この馬琴には義が欠けている
物語も最終盤で語られる馬琴の韜晦の言葉です。
彼は実は黒幕であり、「義」を司るソウスケは彼の元から逃げ出してきていたのです。
馬琴は息子・宗伯を蘇らせたいという思いから、カルデアに対抗する立場に立ちます。世界を守るための正義の組織であるカルデアに対し、あくまで個人的な願いのために馬琴は行動するわけです。ゆえに、自分には「義」がないと呟く。
この台詞は、『八犬伝』を知っていると、非常に重く響きます。
なぜなら『八犬伝』は、仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌という徳を物語の中核に据えた作品だからです。
その作者自身が、自分には「義がない」と言う。
FGOはここで、曲亭馬琴という作家が抱えていた葛藤や、『八犬伝』という作品の背景を一つのドラマとして再構成しています。
これはぜひ語りたかった……!
泣く泣く削った一節だったので、ここで供養させていただきました。
みなさんもぜひ、自分の好きなものについて語ってみてくださいね!
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