第一コラムラボ

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【金融教育】家庭科の先生必見!金融教育の指導で伝えるべき大切なこととは?広島銀行さんに聞いてみた!

ひろぎんホールディングス本社ビル

はじめに

ある日の午後・・・第一学習社会議室にて・・・

ウワサの「金融教育」について,今度コラムラボで扱ってみたいんですけど・・・

いいかもね

家庭科の先生からもよく「金融」についてはお問い合わせをいただきますしね

これまでやってきたことに何かプラスして教えなきゃいけないの?という戸惑いのお声をよく聞きます

そんな先生方のお力になれるような情報を何か発信できたらいいんですが・・

ネットで調べてみてもどこも同じようなことしか書かれてないね・・・

そうですね。何かいい方法はないかな。。。

みんな素人やんか。広島銀行さんにアポ取って「ど素人が銀行マンに疑問ぶつけてみた」座談会みたいなの企画しても良いかもしれん。

なるほど・・・!面白そうですね!ぜひお話聞いてみたいです!

そこで,広島銀行さんにお願いをし,取材をご快諾いただきました。(ありがとうございました!)

 

 

 

家庭科の金融教育

ここで,広島銀行さんに行く前に,少しだけ。

ウワサの「金融教育」って何?と思われた方,いらっしゃるんではないでしょうか。

2022年度から実施されている新学習指導要領において,成年年齢の引き下げ等を踏まえて,家庭科で「金融教育」が重視されることになりました。

学習指導要領: 家庭編P39(PDFリンク)

 

成年年齢が20歳から18歳に引き下げられたことによって,18歳からさまざまな契約(クレジットカードを作る,ローンを組む)を一人でおこなえるようになり,在学中でも生徒が金融トラブルに巻きこまれる懸念が生まれるようになったんですね。

このような状況下で,知識を得て,自ら適切にリスクに備えられるようにするために,「金融教育」の重要性が高まってきているんです。

ですが,あまりにもメディア等で「家庭科で金融教育やります!」という文言だけが取りあげられてしまい,教育現場では「家計管理,生涯を見通した経済計画,リスクへの対応など,これまでの家庭科でもすでに教えてきたことばかり」「何をどこまでプラスαすればいいの???」といった混乱が起きているのが現状です・・・

そうだ,広島銀行さんに行こう!

3月某日,さっそく広島銀行さんに取材に行ってきました!

1Fエントランス(提供写真)

1Fがオシャレすぎる!

ここで一服したいけど,受付にいきましょう。

今回の取材では,グループ営業戦略部 営業統括グループ長のH様と営業企画部 個人企画室 担当課長のT様にお答えいただきました。

H様(右)とT様(左)
金融教育について

さっそくですが,広島銀行さまの金融教育支援について教えてください。

私もそうですけど,たぶん皆さんも,今まで学校で金融教育って受けたことってないはずなんですね。1つのきっかけとしては,「政府の取組み」ということもあります。

【参考資料】資産所得倍増プラン

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/pdf/dabiplan2022.pdf

 

あとは,成年年齢が20歳から18歳に引き下げになったというのは,かなり大きいと思っています。

また,高校の学習指導要領が,改訂されたということ。

加えて,DX※の進展ですね。ほとんどの学生の方がスマホを持っていて,親の知らないところで,SNSでいろんな方とつながってしまう,それがゆえに,親の知らないところでいろんなトラブルに巻き込まれてしまっている可能性もある,ということなんですね。

※Digital Transformation: 企業がビジネス環境の激しい変化に対応し,データとデジタル技術を活用して,顧客や社会のニーズを基に,製品やサービス,ビジネスモデルを変革するとともに,業務そのものや,組織,プロセス,企業文化・風土を変革し,競争上の優位性を確立すること(2018年に経済産業省が公表)

 

これらのキーワード,成年年齢の引き下げと,高校の学習指導要領の改訂,あとはDX進展にともなう金融犯罪の増加懸念,こういったところは,特に若年層にとって避けて通れないことなので,我々としても,金融機関の使命として,大学高校を中心に,まずは正しい知識を知ってもらうことを目的として,支援を行っています。

「地域」の皆様の金融リテラシーの向上を第一義に,「地域貢献の一環」として活動をしているところです。

地域貢献活動への取組み

www.hirogin.co.jp

 

家庭科の先生が高校生に金融教育について指導される際,どのようなお考えで臨まれるとよいでしょうか。

金融教育というと「投資」などのかたいイメージを持ってしまうと思います。

我々が生徒のみなさんにお伝えしているのは,家計管理の重要性や,金融トラブルに巻き込まれないためにどういう知識を身につけておくべきか,ですね。

POINT!家計管理の重要性

現在は,就職や結婚,家の購入などを一定の年齢でおこなうことが当たり前ではなくなり,人々の価値観が変化しています。

そのため,自分がどう在りたいか,どういう人生を送りたいかを考え,必要なお金を逆算して,どのような資産形成をすべきかを考えることが重要です。

また,SNSなどの金融トラブルも増えているため,キャッシュレス決済を利用する際には,使った金額を把握することが必要であり,正しいお金の扱い方を理解し,お金との付き合い方を考えることが大切です。

 

金融教育=投資の話だと思われがちなんですけど,その手前を教えているという感じなんですよね。まずは正しい知識を持ちましょうとか,家計管理の方法や,トラブルに巻き込まれないように,という話が中心ですね。

それを聞かれると,家庭科の先生はすごく安心されると思います。その部分は何十年もずっと家庭科の先生が授業のなかで教えてこられたことなので。

金融について漠然と不安に思っている先生方のお声をたくさん聞くのですが,そのような先生方へメッセージをいただけますか?

我々の話を生徒さんと一緒に聞いていただくと「あ,こういうことか!」と安心されるみたいです。銀行員が特別難しい話をしているというわけではないんです。

投資・資産運用の方法というと,少し専門的な知識が必要になってくるんですけども,その入り口ですね,「なぜ資産運用が必要なのか」「何に気を付けなくてはいけないのか」ということに気づいてもらうだけでも,生徒さんにとっても,意味のあるものになるのではないのかなと思います。

Tさま

 

資産形成の話も,基本的には「長期・積立・分散」です。

POINT!「長期・積立・分散」

社会人になる前の高校生の皆さんにとって,高額な投資をすることは難しいでしょう。しかし,保険をかけつつ長期的に積み立てることで,コツコツと投資をすることができます。

コツコツと投資することで,ある程度のリスクを取ることができます。先生方も,資産形成については他人事であった方が多いかもしれませんが,預金による積立ではほとんど利息がつかないため,リスクを取りつつ資産を増やすことができます。

 

高校の講演会でも,資産運用の必要性を感じてもらうために,ハンバーガーを例にあげてインフレの話をしたりします。

そこで実質的なお金の価値を守るという考え方をお伝えしています。

POINT!身近なインフレ

講演会で,ハンバーガーについて話をすることがあります。

ちょっと前は100円で買えたものが,今は150円になっている。

このように,かつて買えていたものが,今は同じ価格では買えなくなっていることから,お金の価値が相対的に下がっていることに気づいてもらい,100円が100円であることは変わらないが,その価値が下がっていることを理解してもらいます。

参考リンク

nlab.itmedia.co.jp

 

まずは自分自身のお金のことについて関心を持ってみられるのが良いかと思います。月々の収支状況や預金の金利、将来のライフプランなどを一度確認したり考えてみるだけでも生徒さんに伝えられることが沢山あると思いますし,我々の話を聞いていただくっていうのも1つの手ではないでしょうか。

高校の講演会を先生も一緒に受けていただいたときに,「もっと早く知りたかった」というお声もたくさんいただきます。まずは,先生方も生徒さんと目線を合わせていただいて,不安を払しょくしていただければいいのかなと思います。

小中高生を対象にさまざまな金融教育支援を行われていると拝見したのですが,その活動の中で何を1番大切にされていますか?

お金は人生を豊かにするツールの一つなのでしっかり向き合っていただきたいなと思っています。

世の中には様々な金融サービスがありますが、上手く活用すれば私たちの生活を豊かなものにしてくれるー方で,付き合い方を間違えると多重債務で借金が返せなくなるなど不幸になる場合もあります。

しっかり知識を身につけて,お金と正しくつき合うことで,幸せになってもらいたいということを1番大切にして伝えています。

家庭科で「資産形成」や「金融商品」が扱われることについては,どのように思われますか?

家庭科の授業では,ライフプランの話や家計収支のことは,もともと学ばれていたと思います。資産形成や金融商品の話も,その延長線上であり,金融リテラシーを向上し,「幸せな生活を送る」ために必要なことですので,まったく違和感はありません。

「資産形成」や「金融商品」について学ぶというのは金融リテラシーにとって欠かすことのできない一部分だと思っていますので,とっつきにくいかもしれませんが,これから生活していくうえで必要なスキルなんだとお伝えしたい。

運用するかしないかは個人の価値観,判断によると思いますが,なぜ求められているか,ということ自体は知っておく必要があると思います。

高校生に向けて

高校生に向けてのメッセージをお聞きする様子

 

金融トラブルから身を守るためにはどのようなことに気をつけるとよいでしょうか。

①おいしい話には気をつける(おいしい話はないと思っておく),②向こうから近寄ってきてもはっきり断る,③万が一トラブルに遭っても1人で悩まず,諦めないことです。

③については,トラブルに遭ってもなかなか親や友人に相談しづらく,先生に相談する生徒がいると話を聞きます。万が一巻きこまれたら,188いやや(消費者ホットライン)に相談しましょうと伝えています。適切な場所に,早い段階で相談することが大切です。

「人生100年時代の資産形成」という言葉を最近よく耳にしますが,高校生には,かなり先の話です。イメージしやすくする工夫があれば教えてください。

いきなり100年後というとかなり先の話になってくるんですけど,皆さんの一番最初にくるライフイベントに向けて,何を準備すべきかを考えて,その積み重ねが結果100年になると思えば,少しはイメージしやすくなるかなと思います。

実際数字を見ないと,ピンとこないと思います。

Hさま

 

40歳から60歳まで貯める場合と,20歳から60歳まで貯める場合だと,毎月の積立額もかなり違ってきますし,取れるリスクも違ってきます。実際数字で見てもらうことで,おー!という驚きが生まれていますね。

当然ですが,積み立ての期間が長ければ長い方が平準化されて,積立額も下がりますし,期間が短いと必要な積立額が多くなり「毎月こんなに無理だよ」となります。

そういった意味では,若い頃から小さい金額でもいいので,コツコツと積み立てていくのが大事です。積み立て期間が長ければ長いほど,リスクとリターンのブレ幅は小さくなり,リスクは低くなります。ぜひ,早いうちから資産形成というものに意識を向けていただきたいですね。

講演会について

講演会は高校の場合,どのような形で呼ばれることが多いのでしょうか。

必ずしも家庭科の授業で,ということはなく,全校生徒向け,学年単位で総合的な授業として呼ばれることが多いですね。

1クラスというよりは規模大きめにという感じですか?

そうですね。このクラスだけ知っていればいいという知識ではないと思いますし,スケジュール的なこともありますので,学年単位で集まってというパターンが今1番多いですね。

対面の時は生徒さんから質問なども出ますか?

あんまりみんなの前で質問はしづらいと思うんですけど,アンケートなどを見ると,「これからしっかりお金と向き合っていきたい」と前向きな回答をいただくことが多いですね。

授業をされるなかで,工夫されていることはありますか?

そうですね。しゃべる側もずっとしゃべりっぱなしっていうのはよくないので,双方向の授業になるように,クイズであったり,グループワークで動いてもらったり,金融庁のライフプランシミュレーターで実際に自分のライフプランの実現にはいくらかかるかを見てもらったりしています。

ライフプランシミュレーター(金融庁)

www.fsa.go.jp

 

なるほど…。授業の中で1番生徒さんの食いつきの良いところはありますか?

簡単な式があってですね…

金融庁「高校生のための金融リテラシー講座」

 

これが1番反応が良いです。すごいシンプルなんですけど。

収入があって,使って残ったものが貯蓄ではないんですと。

収入があって,いくら貯めるっていうのを差し引いて残ったものを使いましょうということなんです。この式は非常にシンプルなんですけど,すごく生徒さんの記憶に残るところです。

そうなんですね‥!たしかにハッとさせられますね。

生徒さんが楽しんでやられるグループワークには,例えばどんなものがあるんでしょうか。

今までやってもらったものでいくと,18歳になったらできること/20歳になったらできることをクイズにして,どちらが何歳になったらできることかを楽しみながら当ててもらったりですとか,国に見立てた紙皿にボールを入れていって分散投資のシミュレーションをしたりなどがあります。

 

参考リンク

ちなみに第一学習社の生活ハンドブックには,2020年から載っている人気コーナーでこんなものを準備しています!今年でもう4年目になります。

クイズ!18歳になったら

dg-w.jp

www.gpif.go.jp

 

番外編

貴重なお話にメモが進みます。

 

Q まず何か投資を始めたいのですが。

まず,何のために投資をするのかを明確にすることをお薦めします。

Answer

いつまでに,どのくらい資産を作りたいのかによって,投資のアプローチは異なります。その上で,非常に少額から始められる投資信託をまずは検討してみるとよいかもしれません

 

Q 銘柄の選び方は?

独学だけで何に投資するかの判断は難しいと思います。

Answer

(個別はもちろん)投資信託の本数って,ものすごくあるんです。

何千という商品があるなかで,いちばんもうかるものって何?といわれても,我々も絶対わからない話です。

そういった意味で,商品の情報を,たとえば「モーニングスター」などのサイトや,外部の評価,手数料,商品の運用方針を見たうえで,商品の組み合わせを選択していきます。

どうしても初心者の方にはわからないと思いますので,身近な金融機関や,FP(ファイナンシャルプランナー)に相談して,何が自分に合っているのかを確認するのが無難なやり方です。

なかなか独学だけで世界経済や為替の動きを見て何に投資するかの判断は難しいと思います。

参考リンク:モーニングスター※現在は日本語版サイト閉鎖

 

Q 投資力の磨き方とは?

まずは少額でも自分で投資信託などの金融商品を買ってみること。

Answer

そうすることで,その商品がどういう要因で値動きするのかな,という興味がわいてきます。

いちばんベタなのは,新聞やニュースに関心をもって情報を収集すること,そのうえで資産形成の目標を立てるということですね。

車を買いたいからいくらまで等,何か目標がないと漠然としてしまいますし,いくらまで増やしたいかで,逆算すると,毎月の積立額で投資する商品も当然変わってきます。

ゴールも明確になり,興味関心もわいて,投資力もすぐにはつかないとは思いますが,継続的に見ていくことで,なんとなくこういうふうになっていくんじゃないのかな,っていうのは見えてきます。正解はありません。

よく新聞などに有名なエコノミストが予想を書いたりしていますが,それでも全員が当たるわけではありません。

知識があっても相場は読めないこともあるし,ウクライナの問題やコロナの影響など,予測できないことも起こります。

100%こうだと言い切れるものはないけれども,なぜそうなると思いますかという問いに自分の言葉で答えられるようになることが大事かな,と思います。

 

まとめ-取材を終えて

いかがだったでしょうか。

私自身,取材をさせていただく中で,勉強になることばかりでうなずきと驚きが止まりませんでした。「金融」に対するイメージがガラリと変わった気がします。

金融教育について悩まれている先生方へ,最後にもう一度。

“今まで通り教えてこられたことで大丈夫です”

これが金融のプロにお聞きしたメッセージです。広島銀行さんの「お金と向き合って幸せになって欲しい」という願いにぐっと心打たれました。

聞き手も大変勉強になりました!

金融教育=投資ではなく,自分はどう在りたいか,どういう人生を送りたいかということを考えて,そこから必要なお金について考えていく,家庭科の先生方が何十年も続けてこられた授業が根本にあるのだと改めて知ることができました。

そのなかで,さらに「資産形成」について大切さを理解するために,銀行さんの話を生徒と一緒に聞いてもらうと,より安心できる,これも1つの手ということですね!

もしご興味を持たれた方がいらっしゃいましたら,ぜひ広島銀行さんのお話を聞いてみてください。

 

🌸この度取材にご協力いただきましたひろぎんホールディングスのH様,T様に感謝申し上げます。本当にありがとうございました。