
2025年春を起点に、大規模な学参・国語便覧ブームがありました。本記事はその火元となった座談会シリーズの出張企画です。現代文・古文・漢文がそれぞれ専門の国語の若手編集3名とPR担当者が、今回のブームのキッカケになったゲーム開発元である株式会社クリーク・アンド・リバー社に、お話を伺ってまいりました。
- はじめに・開発陣と便覧
- キャラクターの造形について
- どのようにして考証や検証を行っている?
- 国文学などの専門家はどういった形で関わっている?
- ゲームが学校教育の現場でどのように活用できるか
- 関連リンク
はじめに・開発陣と便覧
玉川:本日は取材を受けていただきありがとうございます。最初に第一学習社側の自己紹介を。私が今回、国語便覧のPRもろもろに関して、実務担当者をしております、玉川翔太郎と申します。よろしくお願いします!
うさぎ:編集部のうさぎです。漢文を担当しています。よろしくお願いします!
おさる:編集部のおさるです。古文を担当しています。よろしくお願いします!
ジャガー:今は小論文の担当をしているジャガーです。3年前は現代文の担当でした。この中で唯一の特務司書です!よろしくお願いします!
谷口:では私から。『文豪とアルケミスト』のプロデューサーをやっております、谷口晃平と申します。よろしくお願いします。
ライターT:『文豪とアルケミスト』のシナリオライターTです。本日はよろしくお願いします。
一同:よろしくお願いします。
玉川:このたびは、国語便覧が連日たくさんのメディアで取り上げられました。きっかけとなったのが、SNSのソーシャルゲームクラスタでの拡散ということもあり、ゲームの開発元さまとこの件について話をしてみたいと思いました。私の方からクリーク・アンド・リバー社さまに取材を申し込ませていただき、この場を設定させていただきました。
谷口:はい、教育業界からの取材は初めてですので、どのような話になるか楽しみです。
玉川:早速ですが、この便覧騒動と言いますか、これは皆さんの耳にどれぐらい届いているのかな?と、最初に聞いてみたいです。
谷口:我々は結構文学界隈のニュースに関して注目しているチームなので、ニュースに取り上げられた時点でチーム内で共有されて知っていましたけど、どんなもんなんでしょうね、世間的には?
玉川:ありがとうございます。ご存知いただいており、嬉しいです。僕らは出版業界の中でも、学校に特化している会社なので、やや一般世間と離れてるところはあり、そこらへんの推測が不得手ではあります。
ただ地上波で何回も取り上げていただいたり、AbemaTVとか、ねとらぼさんとか、全国紙でもたくさん取り上げていただいて、あと、Yahooのトップニュースにも出たりとかあったので…結構広まってきているのかな?と。我々としても非常に驚いております。
ライターT:あ、Xの方も拝見しています(笑)「あ、入荷したんだ〜」って見てます。
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玉川:ありがとうございます(笑) 公式Xは複数人のチームですが、この件に関しては私が中の人です。ちなみに、バズりの一番最初の発火点になった、コラムラボの国語便覧の座談会の記事はご覧になられてますでしょうか?
ライターT:はい、それも拝見しました。ソーシャルゲームをこういった形で取り上げるオウンドメディアは珍しいので……軽妙なやりとりも楽しませていただきました。
玉川:ありがとうございます!
おさる:公式さまが見てくれてるって!
ジャガー:こしょばゆい…。
うさぎ:(こいつらタダのオタクになっておる)

玉川:今回の取材に先立ちまして、国語便覧の紙面を共有させていただいてたんですけども。読まれて、何か感想ってありますか?
谷口:今見るとめちゃくちゃおもしろいです。
うさぎ:ありがとうございます!
ライターT:QRコードが載っていたので「なんだろう?」と思って読み込んだら、動画資料がたくさん出てきて驚きました!いまの国語便覧ってこんなに内容が充実してるんだな、と。
おさる:うれしいですね!
キャラクターの造形について
ジャガー:文アルでは文豪の作品ではなく文豪そのものにスポットを当てていますが、それぞれの文豪の作品はキャラクターの造形にどのように関わっているのでしょうか?文アルをプレイすることで文豪の具体的な作品を読むことにもつながる、みたいな要素はありますか?
谷口:実はこれを企画したとき一番最初は、文豪の作品に出てくるキャラクターを活かそうとしてたんです。それで進めていたんですけど、なんかそれだと全然興味持てないって声が結構上がって、それで文豪そのものに切り替えたんです。ただ、作品を読んでほしいので、文豪に興味を持ってもらいつつ、服装のモチーフなどにその文豪が書いた作品のテーマを入れ込みました。
たとえば芥川龍之介だと歯車があちこちについていたりとか、マントの裏地が蜘蛛の糸をイメージしたものになっているとか、そういう意匠とかモチーフに作品のイメージを取り入れました。文アルを好きになってくれたファンが、この文豪の服のこれ、なんだろうって気になったときに調べると、自然と作品を読んでもらえるっていう動線を作ろうとしてキャラクターデザインを作ってます。
ライターT:芥川以外の例を挙げると、わかりやすいのは『山月記』の中島敦ですね。文アルのキャラクターとしては虎をモチーフにしています。さらに二重人格という設定で、図書館にいるときと戦闘に出るときの人格が変わる=虎になるっていうような仕掛けを入れていたりします。
ジャガー:中島敦は虎の毛皮を羽織ってたり、新見南吉がキツネを背負ってたりして、初見で「おお!」っていう見た目になってますよね。
玉川:ほんとだ。新見南吉の手袋は『手袋を買いに』、か。モチーフが細やかですね。

ジャガー:ほかにも、潜書※してるときとかのボイスが、文豪ごとに自分の作品がモチーフになってるのはおもしろい。坂口安吾だったら「堕落しちまえ!」みたいなこと言うから、「わー『堕落論』だ~!」ってなったり。
ゲームしてていろんな場面で、ああ!そうそう!って思えるようになってるのが、やりこみ要素にもなってて好きです。(早口)
※文アルでは戦闘やキャラクター集めなどで本に入るが、それを潜書という

谷口:ありがとうございます(笑)
ライターT:すごく見てほしいと思っていた部分を楽しんでいただけていて、ありがたいです(笑)
うさぎ:そういう細かいところに反映された文豪作品の情報だったりとかは、「実はここにはこういう繋がりがあるんだよ」っていうような感じで、何かゲーム内でヒントになるものって用意されてるんですか?それともプレイしていて気づくみたいな形になってるのでしょうか?
ライターT:開発としては何か仕掛けをしているわけではなく、「さりげなく」「気づく人は気づく」という塩梅に留めています。でも、どんなにさりげないネタでも、気づいて下さる方が必ずいらっしゃいます。特にそういう方は、Xなどで熱心に広げてくれたりもするので、ユーザーの中で伝わっていく感じです。
うさぎ:運営側から積極的に情報発信するというよりは、プレイヤーの方で興味を持って入ってもらって、キャラにハマればハマるほどいろんな細かいこだわりに気づいていくっていうことですか?
ライターT:はい。ゲーム内で解釈の手がかりになる情報は、あくまでもキャラクター、文豪同士の会話の上でしか示されません。あくまでもそういったネタやモチーフは、ユーザーの皆さんが自由に受け取っていただくというような形になっています。
うさぎ:確かにそういう形だと、特務司書の方がXでそういう発信をされたりする、ユーザー間の繋がりみたいなやり取りも生まれたりして楽しそうですよね。
ライターT:そうですね、開発としてもゲームを楽しんでもらった上で、SNS上でも盛り上がってほしいと思っています。
玉川:新しいキャラが実装されたりすると、多分最初に立ち絵とかシルエットが公式から発表されますよね?そしたら即座に考察班が動き出して、「このキャラのこの腰についてるこれはこのモチーフなんじゃないか」とか、そういうコミュニケーションがあって…みたいなのが楽しいということですね。
そういうところをあえて公式が強く言っていかなくても、ファン側で自発的に盛り上げていくというコミュニケーションも楽しみの一つなのかなと、今の話を聞いていて思いました。
谷口:おっしゃるとおりです、ありがとうございます。
どのようにして考証や検証を行っている?
玉川:歴史上の人物や内容が絡むゲーム、まさに『文豪とアルケミスト』なんですけれども、どのような資料を参照されて、考証や検証というものを行っているのかをお伺いしたいと思います。
ライターT:文アルは文学者同士の人間関係の面白さが重要なので、近年の文学研究よりは、ふた昔くらい前の作家研究の本を参考にすることの方が多いですね。作家本人の自叙伝や対談だったり、伝記なども参照します。本人が書いていないことも多いので、あるキャラクターがテーマになったとき、周辺人物が書いたものも読みます。
作家の個人研究という点では記念館や文学館が今もとても強く、面白い研究も出ているので、実装されている文豪の記念館に行ったり、企画展で取り上げられていればできるだけ訪問したりしています。
おさる:教科書制作者側としては資料として教科書が使われていないか、というのが気になっています。例えば、太宰だったり、芥川っていうのは、やっぱり、教科書の中で定番として取り上げられることが多い作家です。それが故に、世間でも結構認知がされているというところもあるかなと思います。
国語の教科書、あるいは国語の教材から、この作家さんを実装しようかなみたいな、開発チームでそういうお話をされていますか?
ライターT:教科書や国語便覧にもお世話になりましたよ。私は文学史はやってなかったので、文アルを開発することになってからはまず、受験の参考書を買って近代文学について学びました。国語便覧では文豪の概要が俯瞰して掲載されているので、人となりや作風を掴むのに役に立ちました。
教科書についても、次にどの文豪を実装しようかという話になったときには、教科書で取り扱われている文豪かどうかは大きな判断材料になっています。「この人はまだ実装してないな」とか、「自由律俳句っていうのもあったな」とか、国語便覧や教科書はそういったことを知るために参考にしています。
おさる:ありがとうございます。なんと…これはよいことを聞きましたね。自分の好きな文豪を紙面にねじ込めば、実装のチャンスがあるかもしれないってこと?
うさぎ:悪い顔してる…。職権濫用?
玉川:なんとも迂遠で壮大な計画(笑)なるほど、教科書に載っているということから、必ずどこかで触れているはず、その親しみやすさから実装しやすいというのはあるのですね。教科書の話題が出ましたけど、どうですか、皆さん。
おさる:続けて質問します。教科書とか便覧には作者解説もありますが、文字情報がメインで、どうしても無機質になってしまうようなところがあります。そこを、『文豪とアルケミスト』のように人間の関係性にフォーカスしたり、キャラクター造形に文豪にまつわるエピソードがあったりして、おもしろさが伝わるのが、教科書や教材とは違ったゲームの魅力だなと思っています。そういった、一次資料や解説書からキャラを立ち上げていくということの工夫について教えていただけたら、と思います。
ライターT:工夫があるとすれば、資料や作品を好きになった上で味わって読むこと、かなと。実在した方を「文豪」として創作するという大胆なことをするためには、時に飛躍した解釈を加えたりする必要があります。文学者御本人に失礼のないようにするためにも、ただインプットするだけでない敬意を持った読み方を心がけています。
おさる:なるほど
谷口:あとは関係性について。そこがまさしく我々の狙いどおりで、文アルでは文豪同士の関係性というところを一番のテーマとして開発しました。
昔高校生のときに現代文で習ったときは全然興味が湧かなかった…っていう人が多いと思うんですけど、やっぱり若い人たちに興味を持ってもらいたいと思ったので、どこをどうすれば興味を持ってもらえるのかと考えた結果、人間ドラマ、その関係性、というところをまず出すとおもしろいのではないかと。「教科書で写真を見て終わりだったけど、この2人こんなおもしろい関係性だったんだ」っていうところがやっぱり引っかかるなと思いました。実装する文豪も、なるべく関係性の多い文豪を選んでいます。
玉川:なるほどなるほど。
谷口:なので、かなりマニアックな文豪もいるんですけども、関係性がおもしろいという理由で採用したりしてますね。
玉川:…ということは、逆に友人関係が少ない文豪は選びにくい…みたいなこともありますか?
谷口:友人が少なくても、島田清次郎みたいに単体で興味深いエピソードがあったりすれば実装されます。関係性が少ないのが逆におもしろい、みたいな(笑)
【新たな文豪情報 島田清次郎】
— 【DMM】文豪とアルケミスト_館報 (@BunAl_PR) 2020年10月10日
自らを精神界の帝王と称する若者。
「闇の力」を抱えており、稀に抑えられなくなるらしいが本人はその力を気に入っている。
「オレは島田清次郎。あまり気安く近寄るなよ。力が暴走するかもしれないからな」(CV:白井悠介)#文アル #白井悠介 pic.twitter.com/g6ysrlhj6O
玉川:なるほど、単体の魅力があれば、余白の部分は完全に創作してもいいから、キャラクター化する余地も大きいのかもしれませんね。そもそも創作でクロスオーバーしてるわけで。
おさる:たとえばどういった文豪さんが、関係性的におもしろい…などありますか?
谷口:そうですね。この企画を思いついたときに一番最初に浮かんだのは、「芥川龍之介と島崎藤村が転生して会ったら何を話すんだろう?」ってところで(笑)
一同:(笑)
谷口:芥川が遺作『或阿呆の一生』の中で島崎を批判していて、島崎もそれを死後に見たから何も言えない…っていう実際のエピソードがあって。じゃあ2人が顔を合わせたら何を話すんだろうな、絶対気まずいだろうけど、意外と対面しても険悪で悪口の応酬をするかも?とか。

谷口:あとは、志賀直哉と小林多喜二。志賀直哉を慕っていた小林多喜二が、もう一度志賀と顔を合わせたら、またどういうこと言うんだろう…とか。そのあたりが頭にありつつ、企画していきました。

ライターT:あとは太宰治にもいいエピソードが多くて(笑)
谷口:あーそうですね。
ライターT:川端康成に「刺す」って言ったりとか、すごく芥川龍之介が好きで「芥川龍之介」の文字を何度も繰り返し書いた落書きとか、有名な芥川の写真のポーズの真似をしていたっていうエピソード。師弟関係以外にも、そういった「ファン」や「アンチ」のような関係性というところもかなり注目していました。

谷口:そこは文学に興味のない人たちが見ても絶対におもしろいと思ったんで、前面に出していきました。
おさる:そういったIF世界みたいなのって考えるとおもしろいですよね!ぼくは古文担当なので、清少納言と紫式部とかで考えてしまいます。史実的にはあの二人の出仕時期は重なってなかったんですけど、もし二人が会ってたら…って想像するとワクワクするので、今の話はとても共感できました!
国文学などの専門家はどういった形で関わっている?
玉川:次の質問に移ろうと思います。ゲーム開発に、国文学や歴史研究専門家の方というのは、どういった形で関わっていたりとか、お聞かせ願えますか?
谷口:普段は関わりがありませんが、タイアップで関わった関係者の方にお話を聞くことがあります。
玉川:関係者というのは、ご遺族やご子孫のことですか?
谷口:ご子孫の方にお会いする機会もありますが、どちらかと言えば、文豪ゆかりの記念館の関係者が多いです。9年運営してタイアップを重ねていくと、その記念館の学芸員さんや、関わりが深い研究者さんからエピソードを聞いたりして、どんどんその情報が入ってくるので、そういった情報を参照しつつ作っていってる感じです。
ライターT:例えば、新実装した与謝野鉄幹。妻の与謝野晶子が本当に有名なので、ちょっと影に隠れてしまっているところがあって。立ち位置として難しい文豪で資料も少なく、文豪化するにあたってどのような解釈にしていくか悩みました。
そんなとき、ちょうど谷口が対談企画などで知り合いになっていた『明星』の研究者の方にお話を伺ったりして、その文学史的な立ち位置であったり、人物像を取材させていただきました。

玉川:そういった取材は、9年開発と運営を続けていく中で繋がった、まさにご縁と言える感じですね。
ゲームが学校教育の現場でどのように活用できるか
玉川:こういった歴史や歴史上の人物をテーマにしたゲームが、学校教育の現場において、どのように活用できるかということについて、もし考えがあればお話しいただきたく思います。
谷口:今ちょうど高校1年生の息子がいて、去年高校受験があったんで、勉強を見たりしていて。その中ですごく感じたのが、特に「歴史」について、語句はちゃんと覚えているんだけど、文章題が難しくて…。最近の高校入試ってすごく難しくて、語句だけ覚えてても解けない問題があるんです。
玉川:歴史を流れとして理解しておくことが必要、といった問題でしょうか?
谷口:そうです、それにものすごく苦労してて。点では記憶できるけど、流れがつかめないっていうから、歴史漫画を買ったりして。それを読んだらちょっと分かるようになった、って言っていて。ただ語句だけを詰め込んでも、やっぱり流れをつかまないとおもしろくもないし、理解もできない…というところで、漫画を読めばちょっとでも理解できるようになったという。
ゲームもこういうところで貢献できるんじゃないかという思いがあります。一方で、学校の参考書とかもうまくできるものがあるといいな…というのは、子どもの勉強を見ていて親として思ったところですね。
参考書もいま読むと、自分はおもしろいなあと思うんですけど、当事者たちにとっては、もう点の記憶で学ぶしかないように見えてるものが多いんで、そこを流れで掴むために、文アルのようなゲームがあるといいなっていうのは思ってます。
玉川:われわれ出版社の課題ですね。導入の難しさ。
うさぎ:そうですね。
谷口:国語もそうですよね。文豪の名前も作品名も、この文豪がこの作品で…って”点”で覚えちゃうともう本当にただ覚えるだけになっちゃうんですけど、その裏のエピソードを紐づけるとすんなり入ってくる。そのあたりを参考書とかで補えるといいのかな、と。だからこそ、背景情報を網羅している国語便覧は本当におもしろいなーって思いました。
玉川:大学入試で文学史が出題されることってあんまりないかもしれないけど、知らないよりは知ってたほうが確実に有利。その分野の高校向け学参で一番役に立つのは、おそらく便覧だよね?
おさる:そうですね。国語便覧を現場で使う理由としては、少なからず受験対策っていうところがまず一つあります。もう一つ、作品そのものの理解を深めるための道具として使ってほしい、というところがあるかと思います。
ただ一口に「受験対策」と言うと、谷口さまのおっしゃったような、無味乾燥な”点”の学習になってしまうかもしれません…が、作品理解を深めるっていう意味でも、その周辺世界っていうのを知っていくということはすごい大事なことだと思います。
谷口:受験対策も。テストには出ないかもしれないけど、知っておいたほうが覚えやすいですよね?
おさる:そうですね。それは確かにあるかと思います。
ライターT:文学に限って言えば、今の時代では、「教養としてこの文豪の作品を読んでおこう」、あるいは「読んでおいたらカッコいい」っていうモチベーションがかなり薄くなっていると思っていて。だからこそ、文学に触れる機会を作ることは学校教育でしかできないはずです。一介の作り手としては、興味の入口になるエンタメ業界と学校教育と二人三脚でやっていくことができれば、これからも現代文学・近代文学というジャンルが読まれていくことに繋がっていくのかなと考えています。
玉川:ありがとうございます。

おさる:先ほどの質問の回答にあった、「運営から情報を示さなくても、ユーザーさんがどんどん調べていってくれる」っていう関係性が本当に素晴らしいと思っていて。普通は「勉強しなさい」と言われたからやる…という受動的な姿勢になりがちだと思うんですが、ファンの方が自分から能動的に調べていくようなコンテンツだというところがすごいなと思いました。
そういった主体的に学ぶ姿勢は、教育現場で目指すひとつの到達点なのですが、実際に『文アル』が学生さんにも影響を与えているな…という実感はあったりしますか?
谷口:影響というと、文学に興味がなかったけど、高校生のときに文アルで文学に興味を持って大学では文学部に入って、いま研究者になってます!って人もいたりしますよ。
ジャガー:なにそれすごい!
玉川:すごいですね、文アルが人生変えちゃってます!
谷口:主体的に学んでいった結果だと思うので、なのでやっぱりゲームとして関係性を推したというところはうまくいったんだろうなと思ってます。
ライターT:自分の経験で言えば、教師になった友人が生徒と話していたら、文アルのことを話してきたっていうことを聞いて。そこで、「一つのコミュニケーションコンテンツとして文アルが役立っている」ということをすごく感じました。こうしたちょっとしたきっかけが積み重なることで、主体的に学ぶ流れになっていったのではないかと思います。
学生としては先生っていう身近な人がちょっと話題にしてくれるだけでも、びっくりするくらい嬉しいことですし、国語の授業をしっかり聞きたくなるものなのかな、と。
人との交流や知的好奇心がくすぐられる経験が重なって文アルが「青春の1ページ」になったのであれば、こちらとしても嬉しいです。
玉川:青春の1ページ!そういうのはすごくいいですね。
おさる:便覧に「文学とメディアミックス」という特集ページがあって。
ライターT:拝見しました!
おさる:今回バズったキッカケでもあるんですけど、『文豪とアルケミスト』って1行で紹介していたところを、好きな方が見つけてくださったんです。ふだんは教科書とかにカタいイメージを持ってると思うんですけど、「こういうの取り上げてくれてるんだ!」というところで話題になった面もあったので、そういったコミュニケーションツールであったり、青春の1ページというふうに思ってもらえたら、すごく嬉しいなと思います。
玉川:本当に1行とかちょっとしか載ってないのに(笑)
おさる:もっと載せるべきだったのかもしれません(笑)
うさぎ:そこは塩梅が難しいですね〜。
ライターT:振り返ってみれば、自分も歴史の漫画にハマってから世界史の学習モチベーションが上がったことがありました。こういったコンテンツの力というのを意識しながら日々制作しております。
うさぎ:便覧は、必要な情報をいかに分かりやすく載せるかという考え方で制作しています。ゲームなどがモチベーションの持続というところで役割を持つのであれば、便覧は、必要な情報をしっかり見せるということに注力できるからいいかもです。
玉川:便覧とゲームの役割分担。
うさぎ:そうですね。なるべく楽しく読んでもらえるようにというところは弊社でももちろん考えているんですけど、まずは教えたいことをちゃんと載せるっていう大前提があるので…。
入口というところと、モチベーションの持続というところをゲームで担ってくださっているのはすごくありがたいなと思いました。ありがとうございます。
後編へ続きます!
関連リンク
取材に至るまでの前日譚は下記の記事を参照
【編集は語る】第一学習社 国語課のディープな座談会『国語便覧』〜前編〜
【編集は語る】第一学習社 国語課のディープな座談会『国語便覧』〜中編〜
【編集は語る】第一学習社 国語課のディープな座談会『国語便覧』〜後編〜
【編集は語る】第一学習社 国語課のディープな座談会『国語便覧』〜3 years after:前編〜
【編集は語る】第一学習社 国語課のディープな座談会『国語便覧』〜3 years after:後編〜