Introduction
こんにちは~
英語の君か
このニュース見てよ
MPs back smoking ban for those born after 2009
おー,久しぶりの英語ニュース解説してくれるの?
4月になると少しだけ仕事が落ち着くからね。
もうボリジョン(ボリス・ジョンソン元首相)が表に出てこないから君もさみしいね。
この記事には登場するから安心してよ。
結局ボリジョンかい。
にしてもね,最近タバコって教材で扱いにくいんだよね。
そうだろうね。英語で扱う必要性もあまりないしね。
唐突だけど,文法のto-不定詞と動名詞を学習するときに,目的語としてto-不定詞をとる動詞と,動名詞をとる動詞があったの覚えてる?
うん。enjoyのあとは動名詞で,decideのあとはto-不定詞とか,そういうやつでしょ?
そうそう。それでstopは動名詞しか目的語に取れないんだけど(stop smoking「禁煙する」),stop to smokeでも正しいときがあるんだよね。
なんか思い出してきたな。
この場合のto smokeはto-不定詞の名詞用法じゃなくて,「~するために」っていう副詞用法なんだよね。
なるほど。つまり、
stop smoking「禁煙する」(他動詞+目的語)
stop to smoke「喫煙するために立ち止まる」(自動詞+副詞句)
ってことか。
そうそう。この比較が分かりやすいんだけどね。「喫煙するために立ち止まる」ってのはもう今は認められないよね。路上喫煙か?ってなっちゃう。
せやな。
文法の例文でも,不適切にならないように気をつけてるんですよ。
大変だね。それじゃあ記事の紹介お願いします。
抜粋していきますね。
Pickup
MPs back smoking ban for those born after 2009
MPs have backed a plan to ban anyone born after 2009 from buying cigarettes, effectively ensuring it will become law.
MPはMember of Parliamentの略で「国会議員」という意味です。
backは動詞だと「…を支援する,支持する」という意味なので,「2009年以降生まれの人にタバコの購入を禁止する計画」を支持したということですね。
a plan to ban …のto-不定詞は形容詞用法の一つで,直前の名詞(a plan)を説明する同格です。入試でもよく出ますよ。
The measures, championed by Prime Minister Rishi Sunak, survived despite opposition from several leading Tory figures - including two ex-PMs.
measure「措置」
Tory「保守党」
championed by …の句は挿入句なので,飛ばして読んでOKです。ちなみに動詞のchampionは「…を擁護する」という意味です。
ex-PMsのexは「前の」という意味を表す接頭辞,PMは「首相(Prime Minister)」
です。元首相2人とは,リズ・トラスとボリス・ジョンソンを指します。
If they become law, the UK's smoking laws will be among the strictest in the world.
→法案が成立すれば、英国の喫煙法は世界で最も厳しいものになる。
amongの語法がポイントでしょうか。知らなくてもなんとなくは理解できると思いますが,among the+最上級で「最も…の中の一つ」という意味です。
(例)This lake is among the deepest in the country.「この湖はその国で最も深いものの1つだ。」
『ジーニアス英和辞典 第5版』
The UK's approach is thought to have been inspired by a similar law in New Zealand, which was later repealed after a change in government.
repeal「…を廃止[撤回]する」
ニュージーランドにも同様の法律があったけど,関係代名詞の非制限用法の節からこれは撤回されたことがわかります。
However, several Tory MPs, including former prime minister Liz Truss, voted against the bill, arguing it would limit personal freedom.
bill「法案」
arguing …以降の分詞構文で「個人の自由を制限する」として,トラス元首相などが法案に反対したとわかります。
スナク首相も保守党なので,保守党内でも反対意見があることがわかりますが,どうやらスナク首相は与党内での支持率の面で厳しい立場にあるようです。
スナク英首相、与党の支持離れ食い止められず-トラス前政権から悪化 - Bloomberg
Last week, ex-prime minster Boris Johnson called the smoking ban "absolutely nuts" during a speech at a Conservative conference in Ottawa, Canada.
nut「頭のおかしいやつ,変人」(使用は避けましょう)ここでは「全くばかげている」程度の解釈ですかね。
call A B 「AとBと呼ぶ」
"When the party of Winston Churchill wants to ban cigars, donnez-moi un break as they say in Quebec, it's just mad," he said.
ウィンストン・チャーチルというと保守党の大政治家で,ヘビースモーカーで知られています。donnez-moi un breakはフランス語で「休憩をください」という意味ですが,ここでは「(チャーチルの政党がタバコを禁止しようとしているだって?)ちょっと待ってくれよ(笑)」というような皮肉的な意味で解釈できるでしょうか。この解釈には担当も自信がありません。
ちなみにmadも「気が狂った」という意味なので,使用するのは避けましょう。
Conservative MPs were given a free vote on the bill, meaning they were not ordered to vote with the government. But full support by Labour’s front bench ensured the measures passed.
Conservativeは保守党(与党)側,Labourは労働党(野党)側を指します。
a free vote on the billはmeaning ...以降で説明がされていますが,与党の保守党議員はvote with the government「政府に賛成する」ように命令されていない,ということです。しかしながら,2文目からわかるように野党である労働党の支持によって,法案は可決されたようですね。
front bench (frontbenchとも)は「野党幹部席」です。
Labour's shadow health and social care secretary Wes Streeting accused Mr Sunak of "putting the bill at risk" by granting a free vote "because he is too weak to stand up to the Liz Truss-wing of his party".
Labour's shadow health and social care secretary Wes Streetingは労働党側の議員です。その人が,自由投票を行うことによってスナク首相がputting the bill at risk「法案を危険にさらしている」と非難します。その理由は,「彼(スナク首相)が党内のリズ・トラス派に立ち向かうには弱すぎる」からだと言います。
その具体的な説明は次の文でされます。
"If we are privileged enough to form the next government, Labour will implement this ban, so young people today are even less likely to smoke than they are to vote Conservative," he added.
privilege「(~する)特権を与える」
implement「(…を)実行する」
If we are privileged enough to form the next government「私たち(労働党)が次の政権を形作る特権を与えられたら」
Labour will implement this ban「労働党はこの禁止を実行に移す」
つまり,保守党政権時に可決された法案ですが,労働党が全面的に支持している法案なので,労働党がもし与党になった場合でもこの法案は施行されるということです。したがって,
young people today are even less likely to smoke「現在の若者は喫煙する可能性がもはや低い」
than they are to vote Conservative「保守党に投票するよりも」
自由投票とすることによって保守党(与党)内のこの法案に反対する勢力が強いことがわかってしまいました。リズ・トラス派閥が今後強くなっていくとすると,保守党が成立させた法案なのに保守党が撤回する可能性がある(→労働党に政権を持たせた方が実行の可能性が高い)という歪な現象を指摘しています。ニュージーランドでは新政権でタバコ禁止法が撤回されたことも念頭に置いているのかもしれません。
日本の政治ニュースを見ていると「大変だなあ」と思いますが,どこの国も似たり寄ったりなのかもしれませんね。
Ms Truss was one of the first to speak against the bill, telling the House of Commons it risked infantilising people.
House of Commons「下院」
infantilise「幼児化させる,子ども扱いする」
トラス元首相の発言で,この法案が「人々を幼児化させる危険性がある」と反対しました。
"It is very important that until people have decision-making capability while they are growing up that we protect them but I think the whole idea that we can protect adults from themselves is hugely problematic."
「幼児化させる危険性がある」を具体的に説明しています。
butの前後で切って解釈しましょう。
前半は,It is important that ...「…(という)ことは重要だ」の構文です。中にuntil-節やwhile-節が入って長くなっていますが,that ...の部分はwe protect them「彼らを守ってあげること」となります。つまり「人々が意思決定能力を持つまで,成長している間は」という期間を限定して「守ってあげることが重要だ(タバコを購入できないようにするほうがよい)」としています。
後半のthe whole idea that ...のthatが同格のthatであることを見抜ければ早いでしょう。主語は the whole idea that we can protect adults from themselves「私たちが大人を彼ら大人自身から保護してあげられるという考え」となり,is hugely problematic「非常に問題だ」と動詞と補語が続きます。
Former minister Sir Jake Berry said he was more concerned about "the addiction of the government to telling people what to do" than he was about people addicted to nicotine.
別の反対意見です。the addiction of the government to telling people what to doについて,addiction to ...「…に対する依存」なので,この場合「(政府による)人々に何をすべきか指図することへの依存」と理解できます。
それを踏まえたうえでこの文の構造を読み解くと,he was more concerned about ["the addiction of the government to telling people what to do"] than he was about [people addicted to nicotine] のmore concerned「より懸念している」の比較対象となっているのは than he was (concerned) about people addicted to nicotine「ニコチンに対して依存している人々に彼が懸念するよりも」となります。
concernedが省略されているので少し読みにくい分かもしれませんが,比較するときは比較対象をそろえるというのが基本です。
"I want to live in a free society where I am free to make both good and bad decisions."
イギリス人作家ジョージ・オーウェルの『1984』を頭に思い浮かべそうな言葉ですね。
Ms Atkins said she understood their concerns about "banning things" but defended the bill arguing: "Nicotine robs people of their freedom to choose."
Ms Atkinsは法案に賛成する側の議員です。
rob A of B「AからBを奪う」
ここでは,「ニコチンは人々から選択の自由を奪う」と主張し,「選択の自由を保証したい」とする反対意見に対して同じ理由で対抗しているようです。
"The vast majority of smokers start when they are young, and three quarters say that if they could turn back the clock they would not have started."
仮定法過去です。「時計を戻せるのならば,(喫煙を)始めなかった」。
現実にはありえないことを仮定して話すときに使います。
Earlier in the day, England's chief medical officer Sir Chris Whitty said once people become addicted to smoking "their choice is taken away".
国会の議員の発言ではなく,医師の経験が書かれています。
He said: "When I was a junior doctor doing surgery I remember the tragedy of seeing people, whose legs had had to be cut off because of the smoking that had damaged their arteries, outside the hospital weeping as they lit up because they were trapped by addiction - that is not choice."
長い文ですが,最初から見ていきます。
When I was a junior doctor doing surgery I remember the tragedy of seeing people, ...
ここまでは大丈夫そうです。「私が若手外科医だった頃の,人々を見る悲劇を思い出します。」
この後にこのpeopleを修飾する部分が2つ,続きます。それぞれが長いので1つずつ見ます。
①:whose legs had had to be cut off because of the smoking that had damaged their arteries
「動脈を損傷することになった喫煙により,足を切断しなければならなくなった(人々)」
関係代名詞whoseが直前のpeopleを修飾しています。smoking that had damagedはsmokingが先行詞,thatが関係代名詞の構造です。artery「動脈」⇔vein「静脈」
②:outside the hospital weeping as they lit up because they were trapped by addiction
「依存にはまっているためにタバコに火をつけながら,病院の外で泣いている(人々)」
現在分詞weepingがずっと前のpeopleを修飾している構造だと解釈します。
outside the hospital は挿入句としていったんスキップして読むとわかりやすいでしょうか。この as は「~しながら」を表します。
light up「(タバコに)火をつける」lightの過去形はlit。
最後にthat is not choice.と締めくくっています。
こんな悲劇は選択ではない。選択の自由を奪われるというが,このような状況はそれ以前の問題だと言っています。
終わりに
法案可決について,法案と可決の概略→反対派の意見→賛成派の意見と続く構造の記事で,非常にわかりやすかったですね。
ニュージーランドでは同様の法律が成立しましたが,タバコの売り上げからの税収がなくなったことにより政策実行上の財源不足に陥り,撤回されました。イギリスでは今後どのようになっていくのでしょうか。