第一コラムラボ

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【海外ニュースを聞く】「地獄で会おうぜ,ベイビー(hasta la vista, baby)」: Boris Johnson's last words at PMQs

Waxwork of Boris Johnson on display at Madame Tussauds, Marylebone, London, England.

 

Introduction

この連載でも複数回取り上げてきたイギリスのボリス・ジョンソン首相が7月7日,所属する保守党の党首を辞任する意向を示しました。

それにともなって首相の職も降りることになります。

 

ええ…この人の隠れファンだったのに・・・

(過去2回も記事にしてるのに隠れてるつもりだったのか)

 

【海外ニュースを聞く】Boris Johnson on Russia's invasion of Ukraine via Twitter - 第一コラムラボ

【海外ニュースを読む】There is such a thing as society, says Boris Johnson from bunker - 第一コラムラボ

 

これとかおもしろいよ!自身の失言に対する記者の追及を紅茶を勧めるだけで乗り切ろうとする首相。

www.youtube.com

明らかに客に出すコップじゃない

言葉通りにコップを受け取ってる記者がいるのもおもしろいでしょ。

紅茶を勧めてそれを受け取っているだけなのに『早く帰れ』と『帰るわけねえだろ』って声が聞こえてくる。

そんなボリス・ジョンソンも今回がシリーズ最後の記事かもしれないと思うとさみしい気がしませんか

たしかに…

 

 

それでは次の動画を見てみましょう。

2022年7月20日に行われたイギリス下院での最後の答弁に臨んだボリス・ジョンソン首相です。

話題になった締めのセリフを含む最後の部分を聞いてみましょう。

今回は難しいところは置いといて,英語的におもしろい部分をピックアップします。

スピーチと違って議会の答弁には周囲の雑音が入り,聞き取りにくいので,YouTubeの字幕機能をONにして視聴しましょう。

www.youtube.com

 

解説は,下記Pickupに続きます。

 

Pickup

0:03

I want to use the last few seconds, Mr. Speaker, to give some words of advice to my successor, whoever he or she may be.

the Speakerとは下院議長のことです。

ちなみに上院議長はthe Presidentと言います。

successorは「後継者」という意味で,その説明がカンマ以下“whoever he or she may be”「それがだれであろうと」でされています。

 

0:10

Number one, stay close to the Americans. Stick up for the Ukrainians. Stick up for freedom and democracy everywhere.

1つ目のアドバイスは「アメリカと緊密であること,ウクライナと共にあること,自由と民主主義と共にあること」とのことです。

「自らが支持するものと今後も仲良くしろよ」ということですね。

stay close to ...stick up for ... は似た表現ですが,どうしてここでは使い分けられているのでしょうか。

stay closeは「そばにいる」という意味です。ここでは「近い関係を保つ」という解釈でしょうね。

一方でstick up for ...は「支持する,擁護する」の意味です。

「支持,擁護」は敵対する相手の存在を前提に用いられる言葉ですので,ここで挙げられている「ウクライナ」や「自由,民主主義」は何かに脅かされているということがわかります。

現段階でそれが何かは明らかですね。

 

0:24

I love the Treasury, but remember that if we’d always listened to the Treasury, we wouldn’t have built the M25 or the Channel Tunnel.

みんな大好き仮定法過去完了です。

<if+had+動詞の過去分詞形, 助動詞の過去形+have+動詞の過去分詞形>「もし…だったら,~だっただろう」。

the Treasuryは「財務省」です。

どの国でも財務省に対する印象は似てるんですね。

 

0:38

And remember, remember. Above all, it’s not Twitter that counts. It’s the people that sent us here.

強調構文2連発です。

スピーチにはよく強調構文が用いられます。強調したいものを前にもってくる構文なので,1文目はnot Twitter「ツイッターではない」ということを強調し,2文目ではthe people「人々」を強調しています。

ツイッターがまるで社会の総意のように捉えないでね、ということでしょう。

エコーチェンバー現象なども気になるので、大事にしたい言葉です。

エコーチェンバー現象とは - コトバンク

 

1:00

Mr. Speaker, we’ve transformed our democracy and restored our national independence as my right honourable friend says.

2019年に首相に就任して以来の自らの功績を誇る場面です。

restored our national independence「国家の独立の回復した」とは国内外からの批判を受けながらも2020年にイギリスがEUから離脱した(ブレグジット:Brexit)ことを指しています。

ブレグジットについてはNHKさんがわかりやすくまとめています。

www3.nhk.or.jp

 

1:08

We‘ve helped, I’ve helped to get this country through a pandemic and help save another country from barbarism.

さらに2つの功績を述べています。

ジョンソン首相の一つは「パンデミックを切り抜けたこと」,もう一つは「他国(ウクライナ)を蛮行から救う手助けをした」ことです。

どちらも解決に至るには程遠い状況ですが…。

 

1:30

Mr. Speaker, I want to thank everybody here. And hasta la vista, baby.

Thank you.

2文目の「アスタ・ラ・ビスタ」※は,映画『ターミネーター2』の有名なセリフです。

※ちなみに英語ではなく,スペイン語の別れの挨拶である。

国内で見かけたニュースタイトルでは「またな,ベイビー」と日本語訳をされていましたが,映画の吹き替えでは「地獄で会おうぜ,ベイビー」または「さっさと失せろ,ベイビー」となっています。

かの有名な戸田奈津子氏の訳として有名ですね。

 

youtu.be

 

このセリフを最後に持ってきたジョンソン首相の気持ちは,どのようなものだったのでしょうか...。

 

 

最後に

在任期間中に「Brexit」,「新型コロナウイルス」,「ロシアによるウクライナ侵攻」と,対応するべき大きな局面を3つも抱えていたジョンソン首相。

しかし辞任の理由としては,これらの政治局面におけるリーダーシップの欠如ではありませんでした。

コロナ対策で国民に行動規制を課している最中でのパーティ開催や,自身が指名した党幹部の不祥事に対する任命責任を問われるなど,度重なるスキャンダルにより支持を失っていったことが原因とのことです。

最終的には閣僚や政府高官合わせて50人以上が辞任を表明する事態となり,首相職を続投するには信用を失いすぎたのです。

 

残念な最後ですが,これも民主主義の一つの側面ですね。

 

 

青ツナギのもちもちしたボリジョン・・・

 

マクロン大統領も大好きボリジョン・・・

 

エリザベス・ライン開通にThumbs upするボリジョン・・・

 

演説をするボリジョン・・・

 

 

ありがとう・・・ボリジョン・・・

hasta la vista, baby

BGM: Hello, Goodbye (Remastered 2015) - YouTube