第一コラムラボ

このたびは,第一学習社 Column Lab.(コラムラボ)に,アクセスいただきありがとうございます。コラムラボは,身の回りの事柄や最新のニュースをコンテンツ化して,学びへの探究心をくすぐるコラム教材を掲載する第一学習社のWebメディアです。

【高校生物】 miRNAってなんだ?ざっくり分かるノーベル生理学・医学賞2024年

Ill. Niklas Elmehed © Nobel Prize Outreach.

ノーベル生理学・医学賞

今年のノーベル賞が発表されたね。

もうそんな時期かあ。今年は誰がどんなテーマで受賞したん?

2024年のノーベル生理学・医学賞は、miRNA(マイクロRNA)とその転写後調節における役割を発見した、アメリカの二人の研究者に贈られたよ。

ノーベル賞2024 生理学・医学賞にマイクロRNA分子発見の研究者ら2人 | NHK | ノーベル賞2024

www3.nhk.or.jp

 

miRNA? 転写後調節? 知らんなあ

 

miRNAとは

 

RNAと聞くと何を思い浮かべる?

mRNAワクチン!

なるほど、いいね! mRNAワクチンの本体は当然mRNAだよね。

なるべく高校生物の範囲でmRNAワクチンについて解説した当メディアの人気記事です。

【COVID-19】高校生物の知識で学ぶ新型コロナウイルスとmRNAワクチンの開発<前編> - 第一コラムラボ

【COVID-19】高校生物の知識で学ぶ新型コロナウイルスとmRNAワクチンの開発<後編> - 第一コラムラボ

 

他に何か思いつくものはある?

ない!

(ないんだ……)高校生物では、tRNAとrRNAというのも学習するね。

mRNA, tRNA, rRNAの概要(『二訂版スクエア最新図説生物』p.92)

tRNAはアミノ酸と結合して、翻訳の際にmRNAにアミノ酸を運ぶ働きをするRNAだね。

なるほど~

最後のrRNAはリボソームの構成成分だよ。リボソームはタンパク質が合成される場となる構造体だから、mRNA, tRNA, rRNAはどれも翻訳の過程で働いているといえるかな。

なるほど~。で、miRNAはこの3つのどれでもないと……。じゃあ具体的にはどういうもんなん?

まず、マイクロという名前の通り、miRNAは短い=塩基対数が少ない。ヒトの場合、mRNAの80%超は1000塩基対以上の長さがあると言われていて、tRNAは約80塩基対、rRNAは最小のもので約100塩基対、最大のもので約5000塩基対。でも、miRNAは約20塩基対しかないんだ。

まあ確かに小さいけど、そんだけ? 単なる小さいRNAってこと?

もちろんそれだけじゃないよ! さっきも少し言ったけど、miRNAは転写後調節に関わっているというのが、ノーベル賞受賞のポイントなんだ。

その転写後調節っていうのが分からんのや。

 

転写後調節とは

 

転写後調節は、簡単にいうと「転写後における遺伝子の発現調節」ってことなんだよね。

遺伝子の発現調節というと、こういうのは習った気がする。

真核生物における調節タンパク質による転写調節(『二訂版スクエア最新図説生物』p.102)

ここに描かれてる調節って転写の前か後、どっちで起こってる?

これからRNAポリメラーゼによる転写が起こるから、転写の前やない?

そう! 転写の前での調節だね。miRNAが発見されるまでは、遺伝子の発現調節=転写の前での調節、だと当たり前に考えられていたんだ。

そういう状況でmiRNAの機能が解明されて、転写後にも調節されるんや! って大騒ぎになった……ってコト!?

しかもその後の研究で、miRNAによる転写後調節は生物全体に広くみられる現象だということも明らかになったしね。

miRNAの役割を明らかにしたことで、結果的に転写後調節という普遍的な概念も発見したんやな。ポイントは掴めた気するけど、結局転写後調節ってなんなん?

転写後調節とひとくちに言っても、今では、miRNAが関わるもの以外にもさまざまな調節がなされていることが分かってる。でもとりあえずmiRNAによる転写後調節について知りたいならこれを読むといいよ!

小さなRNAによる翻訳調節(『二訂版スクエア最新図説生物』p.103)

最後に

miRNAのインパクトは何となくわかったけど、ぶっちゃけ高校生物にはあんまり関係なくない?

ないけど、たとえば本題への導入として、大学入試なんかで登場する可能性はあるかもね。ChatGPTに助けてもらって例題を考えてみたよ!

問 下記の対話文を読んで、対話文内の空欄(1)から(5)に当てはまる語句を答えよ。

生徒A:「今年のノーベル生理学・医学賞ってmiRNAに関するものだったんだってね。」

生徒B:「そうみたいだね。miRNAは主に転写後調節に関わっているんだよね。でも、そもそも転写ってなんだっけ?」

生徒A:「転写は、DNAから( 1 )を作る過程だよ。DNAの特定の部分が読みとられて、( 1 )が合成されるんだ。」

生徒B:「そうだったね。転写後には、mRNAが( 2 )へと移動して、( 3 )が行われるんだよね。」

生徒A:「その通り。そこでmiRNAが活躍するんだ。miRNAはmRNAに結合して、その翻訳を抑制することで遺伝子の発現を調節するんだよ。」

生徒B:「なるほど。遺伝子の発現調節といえば、調節タンパク質による遺伝子発現の調節の仕組みって、どうなっているんだっけ?」

生徒A:「調節タンパク質は、( 4 )に結合して、RNAポリメラーゼに作用することで、遺伝子の転写をコントロールするんだ。」

生徒B:「( 4 )にはどういうものがあったっけ?」

生徒A:「発現の活性化に関わるエンハンサーや、逆に抑制に関わる( 5 )があるね。」

解答付PDFダウンロード

※このデータは無料で提供されていますが,再配布は禁止されています。このデータは,教育機関での利用または非商用目的でのみ使用することができます。このデータを、第三者に再配布することは禁止されています。

miRNAの転写後調節を、高校生物で学習する「転写」と「調節タンパク質による遺伝子の発現調節」に関連させたんか。

最近は理科でもホットトピックを問われることが多いしね?入試でこんな問題が出たとして、miRNAのことを知ってたら安心して問題を読み進められる

……かも!?

……かも!

 

宣伝

資料集はいいぞ。

副教材のご案内|第一学習社 二訂版スクエア最新図説生物

www.daiichi-g.co.jp