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【海外ニュースを聞く】Boris Johnson on Russia's invasion of Ukraine via Twitter

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Kiev, Ukraine "Mother Motherland"

 

Introduction

日本時間2月24日午後1時ごろ,ロシア軍がウクライナに攻撃を開始し,国際社会に大きな衝撃を与えています。

この一方的な軍事行動に対し,各国の首脳がロシアを非難する声明を出しています。

以下は,イギリスのボリス・ジョンソン首相のツイッターアカウントにアップされた動画です。

イギリス英語の発音は話者の出身階級や地域によって大きく異なることが知られていますが,ジョンソン首相の発音は極めて標準的な発音です。

こういった訛りのない標準的な発音はRP(Received Pronunciation)と呼ばれます。

情報が錯そうする世界的な非常事態にあって,各国の首脳が発するメッセージを日本語を介さずに理解することができたら,世界への理解の解像度もまた違ってくるかもしれません。

それでは聞いてみましょう。

 

 

解説は,下記Pickupに続きます。

 

 

 

Pickup

ここでは読解のポイントになる単語や文法事項,背景の文化を引用+解説の順で紹介していきます。本文記事のパートごとに見出しで分けています。記事と合わせて読むことで理解を更に深められます。

0:10

Because our worst fears have now come true. And all our warnings have proved tragically accurate.

このour worst fearsとは,「私たちがもっとも恐れていたこと」,つまりロシアが一線を越えて軍事行動を始めることを指しています。

2文目のour warningsとは,これまでそうならないようにロシアに対してしていた警告を指し,それは的外れな警告ではなくtragically accurate「悲劇的にも正確な」ものであったと述べています。

0:57

Ukraine is a country that for decades, has enjoyed freedom and democracy, and the right to choose its own destiny.

このthatはcountryを先行詞とする関係代名詞です。

for decades「何十年もの間」という副詞句が挿入されているのでわかりにくいですが,Ukraine is a country (for decades,) that has enjoyed …と考えると,簡単な文ですね。

つまり,「ウクライナは自由(freedom)と,民主主義(democracy)と,自らの運命を選択する権利(the right to choose its own destiny)を享受してきた国だ」となり,「何十年もの間」という情報が付加されています。

このenjoyは「…を楽しむ」という意味ではなく,「…を享受する」という意味で捉えるとより正確です。

(例)This area enjoys a cool summer.「この地方は涼しい夏に恵まれている。」
『ジーニアス英和辞典 第5版』

1:07

We and the world cannot allow that freedom just to be snuffed out.

この文のポイントはallow A to B「AがBすることを許す」です。

snuff out …は「…を消す」という意味で,ここでは受動態で使われていることを考えると,cannot allow that freedom just to be snuffed out「その自由が,ただ消されることを許すことはできない」という意味になります。

1:18

It's because we've been so alarmed in recent months Russian intimidation, that the UK became one of the first countries in Europe to send defensive weaponry to help the Ukrainians.

長い文ですが,見抜きたいポイントはso … that ~「とても…なので~だ」の結果を表す構文です

we‘ve been so alarmed (in recent months) Russian intimidation,の部分で「(ここ数ヶ月)ロシアによる脅しをとても警戒していた」という事実が述べられ,その結果がthat the UK …以降に述べられています。

1:47

we must also collectively cease the dependence on Russian oil and gas, that for too long has given Putin his grip on Western politics.

we must also collectively cease「集団としてやめなければならない」と述べており,何をやめるのかというと,the dependence on Russian oil and gasで「ロシアの石油とガスへの依存を」としています。

なぜなら,そのようなロシアへの依存は that for too long has given Putin his grip on Western politics「あまりにも長い間プーチンに西側の政治に対する支配力を与えてきた」ものだからです。ここでいう西側とはNATOをはじめとする資本主義陣営のことをいいます。

事実,ロシアは世界の原油生産量の約12%(世界シェア3位),天然ガス生産量の約
17%(同2位)を占めており,欧州諸国はロシアのエネルギーに大部分を依存しています。西側諸国は,ロシアに経済制裁をするにあたって,自らの国々にもネガティブな影響が出ることを認識しています。

1:59

Our mission is clear, diplomatically, politically, economically, and eventually, militarily. This hideous and barbaric venture of Vladimir Putin must end in failure.

この動画のタイトルにもなっている部分です。ロシアの一連の行動に対する方針を明確にしています。

2:26

I cannot believe this is being done in your name, or that you really want the pariah status it will bring to the Putin regime.

in your nameのyourはロシアの一般国民のことを指しています。後半のpariahは「社会ののけ者」,つまりpariah statusで「孤立的な地位」くらいでとらえるとよいでしょう。

2:46

And if the month ahead are grim and the flame of freedom burns low, I know that it will blaze bright again in Ukraine, because for all his bombs and tanks and missiles, I don't believe that the Russian dictator will ever subdue the national feeling of Ukrainians and their passionate belief that their country should be free.

長い一文ですが,前から順番に構造を見ていきましょう。

最初はif-節で,if the month ahead are grim and the flame of freedom burns lowの主語はthe mouth aheadとthe flame of freedomです。

「もしこの先の一か月間が厳しいもの(= grim)で,自由の炎が消えそうになっても」くらいで読み進めます。

I know that it will blaze bright again in Ukraineはif-節に対応する主節です。

it will blaze againのitは前の文で消えかかりそうになったthe flame of freedomを指します。続く because for all his bombs and tanks and missilesのfor allは「…にもかかわらず」という意味で,in spite ofやdespiteと似た働きをします。

(例)For all his efforts, he failed to score.「彼は懸命にプレーしたが,無得点に終わった。」

『ジーニアス英和辞典 第5版』

ここまでわかると,because …以下は単純な I don’t believe …の構造になっています。

3:21

We will, of course, do everything to keep our country safe.

keep+O+C「OをCの状態に保つ」

3:32

We will work with them for however long it takes to ensure that the sovereignty and
independence of Ukraine is restored.

however long it takes「それにどんなに時間がかかろうとも」

3:49

… it’s an attack on democracy and freedom in Eastern Europe and around the world.

ロシアが起こした攻撃は(単純にウクライナに対する攻撃というだけではなく)東欧および世界の自由と民主主義に対する攻撃であるということを強調しています。

3:56

This crisis is about the right of a free, sovereign, independent European people to choose their own future. And that is a right that the UK will always defend.

スピーチを締めくくる一節です。「英国が常に守る権利は…」と長い説明をするのではなく,先にそれがどんな権利か説明したうえで,「その権利こそ英国が常に守る権利なのです」と短く締めくくります。

こういった情報構造のテクニックも,スピーチ巧者から学ぶことができますね。

 

終わりにそえて

スピーチは単なる物事の説明ではなく,人の心を動かすために行われるものです。

政治家や活動家,起業家の有名なスピーチからはコミュニケーションのヒントが多く得られます。

多くの英語のスピーチが無料で聞ける時代ですので,空いた時間に聞いてみるのもいいですよ。コラムラボで特集してほしいスピーチもTwitter経由などでお聞かせいただければと思います。

twitter.com

 

最後に添えて。

簡潔にウクライナ情勢の近年の流れを簡単に再確認したい方は,以下のページを参照してはどうでしょうか。

www.nikkei.com

 

NO WAR, PLEASE.

www.youtube.com

 

CNN.co.jp : ケニア国連大使がロシア批判、植民地アフリカの歴史引き合いに

ロシア選手も「反対」 スポーツ界で相次ぐウクライナ侵攻への非難 - 2022北京パラリンピック:朝日新聞デジタル