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数学の難問に挑む~フェルマーの最終定理~

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数学の勉強をしていて,難問に頭を抱えた経験は誰にでもあると思いますが,その問題には用意された答えがあることが当たり前でした。

しかし,多くの数学者たちが答えの見つかっていない問題に挑み続け,その過程の中で様々なものを我々に残してくれました。 今回はその中から,フェルマーの最終定理を取り上げます。

 

フェルマーの最終定理とは?

定理の主張自体は,中学生でも理解できるほど単純なものです。

フェルマーの最終定理

次の方程式はn≧3で自然数解をもたない。
x^{n}+y^{n}=z^{n}

n=1の時は考えるまでもありません。
n=2の時は三平方の定理です。例えば(3,4,5)(5,12,13)とすれば方程式が成り立ちます。これらの数をピタゴラス数といいました。

ですが,nが3以上になると,いくら頑張ってもこの方程式を満たす(x,y,z)は見つからない,というのがこの定理の示すところです。

ピエール・ド・フェルマー

ピエール・ド・フェルマー

17世紀のフランスの数学者フェルマー(1607~1665)は,ディオファントスの『算術』を研究し,思いついたことを本の余白にメモしていたそうです。 48個のメモのうち,47つは真偽の決着がつけられましたが,最後まで数学者を苦しめたのがこの予想です。だからフェルマーの「最終」定理なんですね。

ちなみに,この部分のメモには,

「この定理に関して、私は真におどろくべき証明を見つけたが,
 この余白はそれを書くには狭すぎる  」

と書かれていたそうです。
ついでに証明をしてくれていたらよかったのですが,多くの数学者がこの証明に挑み続けました。
そして フェルマーの死後350年以上経った1995年,オックスフォード大学のアンドリュー・ワイルズ教授(1953~)が,半安定な楕円曲線における「谷山=志村予想」を証明することで,この予想が証明されました。

歴史的快挙の裏側には,日本の数学者が大きく貢献していていたんですね!

証明の準備

フェルマーは,最終定理の証明については書き残していませんでしたが,n=4のときの証明は,『算術』の別のところにこっそり書き込んでいました。

n=4のときの証明は,高校生でも(少し頑張れば)理解できる範囲なので,興味がある生徒がいれば考えさせてみると面白いかもしれません。 証明には,無限降下法と,原始ピタゴラス数の性質を用います。

無限降下法とは,数学的帰納法の考え方を用いた背理法の1つです。
大学入試でも,無限降下法が背景にある問題も稀に見かけます。

無限降下法とは?
  • ある命題を真とするような自然数があったとする。
  • それよりも小さい自然数で,命題を真とするように操作する。
  • この操作を無限に繰り返すことで,無限に小さくなる自然数ができる。
  • しかし,これは自然数には1という最小値が存在することに矛盾する。

まるで階段を下るように次々に小さい解が生み出されますが,それは自然数には最小値があることに矛盾することを示す論法をフェルマーは考案しました。

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2つ目は,原始ピタゴラス数の性質です。原始ピタゴラス数とは,最大公約数が1のピタゴラス数のことです。原始ピタゴラス数には,次のような性質があります。

原始ピタゴラスの性質

原始ピタゴラス数は,互いに素で偶奇の異なる自然数m,n(m>n)を用いて
{\displaystyle \begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} a=m^{2}-n^{2} \\ b=2mn\\ c=m^{2}+n^{2}\end{array} \right. \end{eqnarray} }
という形で表すことができる。

この原始ピタゴラス数の性質は,高校数学の範囲で証明できるので,ぜひ挑戦してみてください。

フェルマーの最終定理(n=4)の証明

それではいよいよ,n=4の場合の証明をしていきます。

【問】a^{4}+b^{4}=c^{4}を満たす自然数の組(a,b,c)は存在しないことを示せ。

【証明】

x^{4}+y^{4}=z^{2} を満たす自然数の組(x,y,z) が存在しないことを示せば十分である。
x^{4}+y^{4}=z^{2} を満たす自然数 (x,y,z) が存在すると仮定する。(ただし(x,y)は互いに素)

(x^{2})^{2}+(y^{2})^{2}=z^{2}かつ(x^{2},y^{2},z)の最大公約数は1となるから,(x^{2},y^{2},z)は原始ピタゴラス数である。したがって,互いに素で偶奇の異なる自然数m,n(m>n)を用いて以下のように表せる。

{\displaystyle \begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} x^{2}=m^{2}-n^{2} ① \\ y^{2}=2mn ②\\ z=m^{2}+n^{2} ③ \end{array} \right. \end{eqnarray} }

①から,x^{2}+n^{2}=m^{2}となり,(x,m,n)の最大公約数は1であるから,(x,m,n)も原始ピタゴラス数である。したがって互いに素で偶奇の異なる自然数r,s(r>s)を用いて以下のように表せる。

{\displaystyle \begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} x=r^{2}-s^{2} ①′\\ n=2rs ②′\\ m=r^{2}+s^{2} ③′ \end{array} \right. \end{eqnarray} }


②より(\frac{y}{2})^{2}=m \times \frac{n}{2}が成り立ち,m\frac{n}{2}は互いに素であるから,m\frac{n}{2}はいずれも平方数である。
同様に② ′より\frac{n}{2}=rsとなるが,\frac{n}{2}は平方数であり,rsは互いに素であることから,rsはいずれも平方数である。

よってm,r,sは自然数u,v,wを用いて,m=w^{2}r=u^{2},s=v^{2}と表せる。これを③′に代入すると
w^{2}=u^{4}+v^{4}
となり,もとの方程式と同じ形となり,新しい解(u,v,w)を得たが,
z=m^{2}+n^{2}>m^{2}=w^{4}≧w よりz>w(>0)

この操作を繰り返すと無限に小さい自然数の組(x,y,z)が構成できることになるが,これは自然数には1という最小値があることに矛盾する。よって背理法により題意は示された。■

まとめ

無限に小さくなる自然数ができてしまい,zが最小値を持つことに矛盾することを示しているのがポイントでした。

350年以上,世界中の数学者が証明できなかった命題であっても,その一部分であれば,手が届かないわけではないことが体験できたかと思います。数学の歴史に足を踏み入れた気持ちになりませんか?
次回の記事では,最近話題となったABC予想を取り上げます。

参考書籍・サイト