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【数学】神秘的な素数の世界<前編>

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「私の年齢は素数です。」「今日の日付は素数ですね。」など,素数に対する愛に溢れた人に出会ったことはありますか?
そういう人を見かけても,怖がったり逃げたりしないでください。それくらい,素数は人々を惹きつける性質をもった数なのです。

 

素数とは

まずは,素数の定義から確認しましょう。

素数(prime number)

正の約数が1と自分自身のみである自然数。ただし1は除く。

素因数分解の一意性(任意の自然数は,素数の積として順序を除いてただ一通りに表せる)のため,1は素数に含めません。

1と素数以外の自然数は素数の積で表すことができ,これを合成数といいました。それ以上分解できないという意味で,読んで字のごとく,素数は自然数のもととなる数です。

素数の出現

素数が現れるタイミングは気まぐれで,規則性などはないように見えますが,それが素数の面白いところとも言えます。

ウラムの螺旋

ポーランド出身の数学者スタ二スワフ・マルチン・ウラム(1909~1984)は,整数をらせん状に並べて素数に印をつけていくと,縦横の線や斜めの線がうっすら見えることを発見しました。この模様はウラムの螺旋 らせんと呼ばれます。

ウラムは研究発表の際に,退屈しのぎに落書きをしていてこれを発見したそうです。この模様の意味は解明されていませんが,素数の出現に何らかの規則性があるかのように見えますね。

 

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ウラムの螺旋 出典:200×200 Ulam spiral"by Grontesca at English Wikipedia is licensed under CC BY-SA 3.0

いろいろな素数

〇〇素数というように,素数はその特徴に応じて様々な名前が付けられています。ここではその一部をご紹介します。

  • 双子素数:「3と5」や「11と13」のような,差が2の素数のペア
  • いとこ素数:「3と7」や「7と11」のような,差が4の素数のペア
  • セクシー素数:「5と11」や「7と13」のような,差が6の素数のペア
  • 三つ子素数:「5と7と11」のような,(p,p+2,p+6)または(p,p+4,p+6)で表せる3つの素数の組。

これらは,素数の差に注目して分類しているものです。三つ子素数は上3つの素数を含んでいますね。

これらの素数は無数に存在すると予想されていますが,未だに証明はされていません。

メルセンヌ素数

2^n-1の形で表すことのできる数を,メルセンヌ数といいます。そして,素数であるメルセンヌ数を,メルセンヌ素数といいます。

2^n-1が素数であるならば,nも素数ですが,逆は成立しません。

  • 例)11は素数だが,2^{11}-1=2047=23×89は素数ではない。

メルセンヌ素数についても,無数に存在すると予想されていますが,証明はされていません。

 

現在分かっている最大の素数

素数であることが確認されている最大の数は,2^{82,589,933}-1です(2021年4月時点)。
これは,2017年にメルセンヌ素数探索プロジェクト「GIMPS」が発見した51個目のメルセンヌ素数であり,桁数は2486万2048桁にも及びます。
これまで確認されていた最大の素数(50個目のメルセンヌ素数)よりも,約160万桁大きい数となります。

GIMPSのホームページでは,この素数が書かれたデータをダウンロードすることができます。
※なんとテキストファイルにして約24.8MB!

www.mersenne.org

素数は無数に存在する

非常に大きな素数をご紹介しましたが,そもそも素数に”最大値”はあるのでしょうか?

答えはNoです。実は,素数が無数に存在することは古代ギリシャから知られていました。この証明はユークリッドの『原論』に記されています。

簡潔な証明ですので,少し見てみましょう。

 

素数が無数にあることの証明(ユークリッド)

任意の異なるn個の素数をとり,そのリストをp_{1},p_{2},…,p_{n}とおく。
N=p_{1}×p_{2}×…×p_{n}+1という数を考える。

Nはリストにあるどの素数でも割っても1余るので割り切れない。
したがってNはリストにない新しい素数であるか,リストにない別の素数で割り切れなければならない。
よって新たな素数が存在する。

これを繰り返すと次々と新しい素数がみつかるので,素数は無限に存在する。

他にも背理法を使った方法などが有名ですが,フィリップ・サイダックは次のような証明を与えました。

 

素数が無数にあることの証明(サイダック)

N_{1}を1より大きい任意の整数とする。
N_{1}N_{1}+1は互いに素より,N_{2}=N_{1}(N_{1}+1)は少なくとも2つの異なる素因数をもつ。

同様に,N_{3}=N_{2}(N_{2}+1)は少なくとも3つの異なる素因数をもつ。

これを繰り返すと,いくらでも多くの異なる素因数をもつ数を生成できるので,素数は無限に存在する。

連続する2つの自然数n,n+1は互いに素であることを用いた,非常にエレガントな証明ですが,なんとこの証明が発表されたのは2006年だそうです。
こんなにシンプルな証明が,つい最近まで見出されなかったというのは驚きですね。もしかすると,まだまだ証明方法はあるのかもしれません。

まとめ

素数については未だに謎が多く,不思議な現象を見せるからこそ,魅力的なのかもしれません。後編では,素数の出現や個数など,より詳しい内容に踏み込む予定です。

 

最後にもう一つ,こちらの画像をご覧ください。
これは517桁の素数を11行×47列に並べ,1だけ色を変えたものです。何か文字が浮かび上がって見えませんか…?

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何が見える・・・?
 参考書籍・サイト
  • 素数物語 アイディアの饗宴 中村 滋著,岩波書店,2019年
  • ニュートン別冊 数学の世界 数と数式編 2020年
  • ニュートン別冊 ゼロと無限 素数と暗号 2012年
  • Prime Curios!(素数に関する面白い雑学がまとめられています)